たいせつにします プライバシー 17002231(02)

 

2018.6.11

前人未到の挑戦 ~「熱融通」の話

<02回>

前人未到の挑戦~「熱融通」の話【その2/全3回】

やりがいのあるプロジェクト

小林のひらめきから始まった「2工場をつなぐ」という偉大な挑戦は、実施が決定したものの、検討課題が山積みだった。参考にできそうな既存の案件はなく、すべてが一からである。道路工事の認可を取り付けるのは渡辺の担当となったが、「どこに確認すればいいのか」(渡辺)すらわからない。とはいいつつ一方で渡辺は、「誰もやったことのないプロジェクトに、やりがいを強く感じていた」という。
始まりは夏のさかりだった。2工場をつなぐためには間に通る公道の掘削が欠かせない。渡辺は工事の許諾を取り付けるため、関係各所に飛びこみ同然で交渉に当たっていた。前例が無いため手持ちの資料は通常の何倍にもなり、毎日が汗だくだった。

渡辺が許諾交渉に奔走していたころ、小林は本社で、2工場の「エネルギー稼働の分析」に着手。過去数年分の運用実績を取り寄せ、本計画開始後に想定されるエネルギー効率や、蒸気の受け渡しに係る課題の洗い出し、その他のあらゆる検討課題について細かく検証していた。
小林が頭を悩ませたのは、2工場の稼働時間や休日が異なっていたこと。熱融通により、できるだけ多くのメリットを双方に出すためには、「計画実施後のエネルギー供給をどのように行うべきか」。あるいは、2工場ともに「自由に、普段通りに」工場を稼働させながら、どちらにも同じように喜んでいただくために「より効果的な策はないか」―。さまざまな条件下でエネルギー供給をシュミレーションし、2工場の効率を1時間単位で検証。パソコンと向き合う日々が2か月の間続いていた。

本計画実現のための掘削工事の様子。2工場を地下パイプでつなぐためには掘削地点も重要課題だった。渡辺が現地調査を繰り返し、何度も設計図を書き直して、理想的な掘削場所を探し当てた

地下に生きるソリューション

公道の下を掘削するという難題と並行して、渡辺は配管の設計にも取り掛かっていた。今回のプロジェクトの主軸は、「日産からJ-オイルミルズへ蒸気を送る」ためだが、地下に通すのは「蒸気配管」だけではなく、「電気系統」と、さらに蒸気の原料を送る「純水配管」が必要だった(※J-オイルミルズで使用する蒸気の原料として純水をJ-オイルミルズから日産へ送ることになっていた)。

それらの配管を通す掘削地点を1か所に限定するため、この3本を1本の親配管に並べて配することが課題だった。同じ配管でも、蒸気配管は熱を発し、電気系統は熱にも水にも弱い。隣合わせるにはどうしたらいいのか。渡辺は、口径や厚みの他に、断熱効果、さらには耐久性等も含めて使用する素材の検討を重ねることになった。
そして、慎重に設計を進めた結果、「これまでにない高品質な配管をつくることができた」と、渡辺は胸を張る。「耐久性も15年以上を確保。オーバースペックになるほどの出来栄え」(渡辺)となり、ここでも一つ、TGESらしい技術ソリューションが生まれたのだった。

難問と思われた課題を一つひとつクリアし、前例のないエネルギーサービスはいよいよ設備建設の着工の日を迎える。小林と渡辺の思いは、さらに高まっていく―。

<つづく>

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