たいせつにします プライバシー 17002231(02)

 

2018.6.25

前人未到の挑戦 ~「熱融通」の話

<03回>

前人未到の挑戦~「熱融通」の話【その3/全3回】

関係者全員で、一丸となって

2014年6月。日産とJ-オイルミルズは、最終合意に係りトップ会談を開催。TGESも出席したこのときの会議は決して儀礼的なものではなく、双方が率直に疑問や意見をぶつけ合うものだったことを小林は記憶している。「その場にいた全員が、真摯にこれからのエネルギーサービスに取り組もうとしていた。活きた議論の場になりました」(小林)。
この1時間半にわたる会議で、関係者が一丸となって「一つのゴールを目指す」ことを総括とし、着工は2015年3月。日産のコージェネ新設と、2工場をつなぐ配管工事が同時進行で行われ、同年9月、双方の構内から掘り進められたトンネルが地下でつながった。
渡辺からの電話でトンネル貫通の知らせを受けた小林は、「思わず目頭が熱くなりました。もう大丈夫、この仕事はうまくいくと確信しました」(小林)。

前人未到の計画を小林が日産に提案した日から3年の月日が経過した2016年1月、全ての工事が終わった。そして翌月から2工場では新しいエネルギーサービスの取り組みがスタート。そのときつながったのは、地下配管だけではなく、「公道の向こう側に、お互いにエールを送るような気持ちも」、渡辺は感じとっていた。

施工の最終局面で、配管内を洗浄するために最初の蒸気が流された瞬間(J-オイルミルズ側)。「青空に噴き上がった白い蒸気を万感の思いで眺めながら、これでつながったと実感しました」(渡辺)

“発想する”という力

この計画は、とりわけ異業種間のコラボレーションが着目されがちだが、はじまりは、ある問題の解決を探った“発想の力”である。
「エネルギーサービスのプロとして、お客さまだけでは気づかなかった新提案(熱融通)を発掘できたのが幸い」と小林は言い、そのひらめきの結果こそが、業界が注目する大きなニュースとなった。
この先も日産が「好きなだけ電気を使えるように」、また、J-オイルミルズが「安定的に蒸気を確保できるように(※日産が稼働しない場合のバックアップの提案等)」、日々コンタクトをとりあって、TGESが2工場を全力で支え、運用を管理する。
課題は、現在の運用ノウハウがこの先も引き継がれていくこと。使用形態も管理者も担当者も、時間の経過とともに変わることがあるが、「15年の契約の中で、本サービスが双方のお役に立つように、きちんと働きかけていきたい」(小林)。

いま、渡辺は「付近を通ると今でも奔走した当時を思い出す」といい、小林も同様に「現場が見える首都高を走るたび感慨深い」という。そしてともに、「今までの仕事の中で最高に面白かった!」と迷いなく声をそろえる。
あらゆる業種の工場からも「同じことがうちでもできないか」と相談が寄せられるようにもなった。「隣の工場のことは案外知らないもの。そこに気づけるのが私たちの強みであり、エネルギーサービス事業者として提供すべき価値なのだとあらためて認識しました。同様のサービスを今後も増やしていきたい」(小林)。

難攻不落と思われた計画を統括し、異業種間の熱融通という新しいスキームを実現させた今回のプロジェクト。両者にとって「前例がない」のはあきらめの理由にはならなかったのだ。「誰もできない、に挑む」を実践すれば、それが前例になり、そして、ひとつのひらめきから生まれた知見と新しいサービススキームは、もう未来につながっている。

前人未到の挑戦 ~「熱融通」の話【その3/全3回】<了>

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